フラジョレット(ハーモニクス)の読み方(第1.1版)
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スコアを見ながら弦楽器を打ち込んでいて、ふと途方にくれることがあります。
五線譜上に突如現れる四角い音符....

なんだぁ?どういう音だぁ?どう読むんだぁ?
これがハーモニクス(フラジョレット)という特殊奏法です。
それではゆるゆると説明していきましょう(^_^)。
- どんな音色?
これはここでごちゃごちゃいうよりも実際の音を聴いてください。例として
「春の祭典」の第二部・序奏を御薦めします。ここにはふんだんにハーモニク スが登場しますがコンサートマスターのソロを聴いてみてください。
- どう書いてある?
前述「春の祭典・第二部」でのソロは次のように書かれてます。
ではなく
で書かれてます。このときの音は「
の位置をそのまま読む」のです。
つまり
によりハーモニクスの指示をだした以外は何もありません。
このときの
は楽譜上では音程に関係ない位置(邪魔にならない位置)に書かれます。
「春祭」ではなんと
の横に置かれてる箇所がありました。
同じ「春祭」でも第一部の「大地への口づけ(THE
SAGE)」では
で書かれてます。 ここでの1st Vn.は
と書かれてます。 下の
はB4、上の
はE5の位置ですね。
このときの実音はB6となります。つまり
の2オクターブ上です。
なぜそうなるのか?という物理的な説明は略しますが、(実はよく判らない(^^;)下の
あるいは
と上の
との差が完全4度あるときは下の
の2オクターブ上の音が出るのです。半音を1として数えると差が5あるときです(シーケンサでよく使われるK#の差になります。ちなみに前述B4は71、E5は76です)。
同じ箇所の1stVc.では次のようになっています。
下の
はD3(50)、上の
はF#3(54)で差が長三度(4)です。
このときは上の
の2オクターブ上の音が発音されます。
同じ箇所のコントラバスにはこんなのがあります。
(1)は
がC2(36)、
がG2(43)で完全5度(7)あります。
このときは上の
の1オクターブ上の音が出るのです。
(2)は
は同じですが
がC3(48)で完全8度つまりオクターブです。
このときは上の
の音がそのまま出ます。
また、春祭にはありませんがバイオリンソロなどでこの様な記述がされることがあります。
この場合は一番上の
の音となります。
これは下の
と
が弦を押さえる場所、上の
が実際の音を表しているのです。
- ここまでのまとめ
あるいは
の上に
があるとき(まれに下や横にあることもある)は
あるいは
の音そのまま。
は音程に関係ない位置に記述される。
あるいは
の上に
があるとき(絶対に上)は
にも音程がある。
差が長3度(4)のとき |
の2オクターブ上 |
完全4度(5)のとき |
あるいは の2オクターブ上 |
完全5度(7)のとき |
の1オクターブ上 |
完全8度(12)のとき |
の音そのまま |

の上に更に
が有る場合は一番上の
の音そのままである。
また今回は例を見出せませんでしたが、長6度という関係も成り立ちます。
これは非常にややこしく、
の完全12度上となります。つまり
がG3(55)、
がE4(64)にあるときはB5(83)の音が出るのです。
長6度(9)のとき |
の12度上(19) |
それからほとんど無いと思いますが短3度という関係があります。これはもっと難しく
がG2(43)、
がBb2(46)のときD5(74)という関係が成り立ちます。
ただしこれは後述するコントラバスでの開放弦以外にはないでしょう。
#もっと厳密にいうと短3度より少し上のポイントですが表記できないので短3度と書かれます。
しか書いてない?!
と
が書かれてる場合は以上の事に注意すれば良いと思いますが、問題は
しかかかれていないときです。
これは
にあたる部分を開放弦(押さえない音)にしているのです。これは弦楽器の調弦を知らないと判りません。
取り敢えず挙げます。
ヴァイオリン |
G3 |
D4 |
A4 |
E5 |
|
ヴィオラ |
C3 |
G3 |
D4 |
A4 |
|
チェロ |
C2 |
G2 |
D3 |
A3 |
|
コントラバス |
E1 |
A1 |
D2 |
G2 |
|
5弦コントラバス |
C1(B0) |
E1 |
A1 |
D2 |
G2 |
5弦バスの最低音は判断が難しく、前述春祭ではC1の様ですが、ローマの松ではB0です。
1発のハーモニクスでない限り問題はないですが難しい....
実は調弦を知ってるだけでは判断に苦しむこともあります(^^;。
例えば
ヴァイオリンでG4の位置に◇があるとします(1)。このとき
の位置はD4(2)とG3(3)が想像できます。A4やE5ではG4を押さえるのは無理ですからね(^_^)。
このとき奏者は(2)と判断するのです。つまり音はD4の2オクターブ上のD6となります。
それではなぜ(3)ではないのでしょうか。こちらの場合での音はG4となりますが、これを要求するときは通常は
をつけて表現する、あるいは
をしっかり記述するのです。
難しいですね(^^;。ちょっといい方法を思いつかないのでよく出そうな
を 羅列しましょう(^^;。
ヴァイオリン
の位置 |
B3 |
C4 |
D4 |
E4 |
F#4 |
G4 |
A4 |
B4 |
C#5 |
D5 |
E5 |
F#5 |
G#5 |
A5 |
B5 |
C#6 |
実音 |
B5 |
G5 |
D5 |
B5 |
F#6 |
D6 |
A5 |
F#6 |
C#7 |
A6 |
E6 |
C#7 |
G#8 |
E8 |
B7 |
G#8 |
ヴィオラ(ヴァイオリンの完全5度下)
の位置 |
E3 |
F3 |
G3 |
A3 |
B3 |
C4 |
D4 |
E4 |
F#4 |
G4 |
A4 |
B4 |
C#5 |
D5 |
E5 |
F#5 |
実音 |
E5 |
C5 |
G4 |
E5 |
B5 |
G5 |
D5 |
B5 |
F#6 |
D6 |
A5 |
F#6 |
C#7 |
A6 |
E6 |
C#7 |
チェロ(ヴィオラの1オクターブ下)
の位置 |
E2 |
F2 |
G2 |
A2 |
B2 |
C3 |
D3 |
E3 |
F#3 |
G3 |
A3 |
B3 |
C#4 |
D4 |
E4 |
F#4 |
実音 |
E4 |
C4 |
G3 |
E4 |
B4 |
G4 |
D4 |
B4 |
F#5 |
D5 |
A4 |
F#5 |
C#6 |
A5 |
E5 |
C#6 |
コントラバス(4弦)(蛇足ですが常に1オクターブ高く記譜します)
の位置 |
G2 |
G#2 |
A2 |
B2 |
C#3 |
C3 |
C#3 |
D3 |
E3 |
F#3 |
F3 |
F#3 |
G3 |
A3 |
B3 |
Bb3 |
B3 |
C4 |
D4 |
E4 |
実音 |
B3 |
G#3 |
E3 |
B2 |
G#3 |
E4 |
C#4 |
A3 |
E3 |
C#4 |
A4 |
F#4 |
D4 |
A3 |
F#4 |
D5 |
B4 |
G4 |
D4 |
B4 |
弦 |
E上 |
A上 |
D上 |
G上 |
機械的に書き出すとコントラバスは問題がありますねぇ。同じポイントで
複数の音が出ます。おそらく用いる場合は奏する弦を指定すると思います。 実例はみたことありません(_ _)。
それとコントラバスではバイオリンなどでは
用いないポイントがあります。B3 E4 A4 D5の音が出るポイントです。 ラヴェル の曲でかなり用いられてます。ピストンの管弦楽法ではちゃんと言及していま
した(買ったんなら読めよ>ワシ(^^;)。